そろそろトヨタの赤字にひとこと言っとくか

実に嘆かわしい。いや、この「トヨタの赤字 本当ですか?」の内容のことだ。「本当ですか?」と問う以上は「本当じゃない」要因を探そうとしているのだろう。しかしながら、その探し方、ほかならぬエントリの内容そのものが実にお粗末で、我慢のならないレベルなのだ。
とはいえ、これは我々コンサル(笑)のような企業財務・会計にかかわる者、証券市場にかかわる者、あるいはもっと専門的な公認会計士や企業の経理スタッフ、証券アナリストといった人たちがいかに社会にコミットしてきていなかったかという一つの証左でもある。そうした人々は猛省をもち捉えるべき事象なのかもしれない。
ちなみに、企業の決算開示が原則連結ベースと定められたいわゆる「会計ビッグバン」があったのが 2000 年のことである。それ以前は、上記エントリで示されたようなこともなかったとは言えない。実際、破たんして今はなくなってしまったとある大企業の決算操作に関するシステム構築に携わった経験も俺は持っている。正直、今となってはあまり掘り返してほしくない過去の一つだ。
だからこそ、今の財務会計制度の下で依然そのような利益や損失の付け替えがグループ内でされていると主張するのは、財務会計や証券市場の制度根幹を揺るがす暴論とすべきだろう。もしそういう主張がしたいのであれば、きちんと「裏」を取った上で行うべきなのは言うまでもない。
しかしながら、冒頭のエントリの主は、トヨタ自動車に(自社の都合を良くするための)利益の付け替えがあったと言いはばからない。連結会計で、仮に親子間で利益が移動したとしても連結すればイコール(いや、もしも内部取引なら消去される)というのが世の常識と思っていた俺としては、非常にショックだった。
ただ、エントリにもあるように、トヨタの社長が創業家に「大政奉還」されたタイミングで余計な憶測を呼んでいるのも事実ではある。とはいうものの、余計な憶測に乗じあらぬ疑いをたとえトヨタといえども個別の企業に向け掛けることは、今の経済社会全体を暗く覆っている本当の問題から目をそらさせることになる。それこそ、「声の大きな者」の思うツボだ。
我々は、制度に関する最低限の理解をした上で、問題を直視することが改めて求められているということを、冒頭のエントリを通じ知るべきだろう。