小室逮捕に思う

今いちばん感じてるのは、20 世紀が終わったなというアキラメ感というか、虚脱感のようなものだ。'90 年代に TRF とか朋ちゃんとかがヒットしたのは、ちょうどバブル崩壊を経て日経平均株価が今くらいの値の頃で、リストラの嵐が吹き荒れてた時期だ。あ、そういえば、この頃の代表的なリストラ企業は、先日業績不振で社長が辞任を表明したパイオニアだった。だから俺にとっちゃ、パイオニアはダメ会社の典型。CDJ-1000 とか、商品はクールなんだけどね。
えーと何だっけ、ああそうだ小室だ。'80 年代に青春(笑)を過ごした俺にとっちゃ、小室なんてのは「ベストヒットUSA」などのリバイバル特集のときにやたらとゲストで出てきてうぜぇと思ってたこともあったっけ。その頃は、先に挙げた TRF とか朋ちゃんとかのブームは既に過ぎ、globe の KEIKO とくっついちまってたはず。
で、じゃあなんで小室が落ちぶれちまったか。俺は、小室の「インチキ英語」歌詞が問題だと思ってるんだな。'98 年、宇多田ヒカルが“Automatic”で華々しくデビューを飾った。キコクの彼女は、本格的な英語を操るのはおろか、歌唱やビートのセンスも抜群だった。そういう宇多田が小室を駆逐するのも時間の問題だろうと思ってた。
例えば小室の代表作“Can You Celebrate?”(Sung by 安室奈美恵)。
Can you celebrate?
Can you kiss me tonight?
歌詞がオカシイと思った人は、TOEIC 600 点ないしは英検2級くらいの実力があるかな。そう、celebrate という動詞は vt.、つまり目的語を必ず取るものだ。だから、“Can you celebrate?”では文章として成立しない。
そんなインチキ英語をどさくさに紛れて隠すようにサビを強調したメロディの薄っぺらい曲を世に向け量産し続けた小室が、本格派(笑)でキャッチー(笑)で適度にファンキー(笑)でダンサブル(笑)な宇多田に早晩駆逐されてもおかしくなかった。
宇多田のデビューから 10 年、小室はついに堕ちるところまで堕ちたということか。これで本当に損をしたのは誰か、あるいは逆に得をするのは誰なのか、今のところはわからない。久しぶりにようつべで朋ちゃんの“I'm Proud”を掛けてみると、これはこれでなかなか心地良い。量産型クリエイターとしての小室の才能は、その巧拙は置いといても評価してやってよいと今じゃ思ってる。
でも、やっぱ小室の時代は、もはや重い鉄の扉が閉められるように終わりを迎えたとするのが正解なんだろう。これからどんな音楽が出てくるのかわからない。俺が好きだった '80s の洋楽がときどき今でもリバイバルやリメイクで聞こえてくる。反面、現在の洋楽はライムとディーヴァばっかりだ。いや、それは邦楽でも青山テルマなんかが典型例になってる。とはいえ、俺は青山テルマは嫌いじゃない。
こんなかんじで、これからも流されていくんだろうな。そんないち消費者でいられることは、しかし、案外ささやかな幸せなのかもしれない。